04
唎酒師の漫才師
にほんしゅ

唎酒師資格を持つ異色のお笑いコンビ 「にほんしゅ」

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唎酒師の漫才師にほんしゅ

唎酒師資格を持つ異色のお笑いコンビ 「にほんしゅ」

コンビ2人とも唎酒師(ききざけし)資格を持ち、日本酒の魅力を漫才にのせて楽しく伝えるお笑いコンビ「にほんしゅ」の2人(左:あさやん、右:北井一彰)は日本酒のボトルが並んだ棚を前にすると「立体的なストーリーが浮かぶ」と言います。2人の活動や日本酒の魅力について聞きました。
エクストボーイ
にほんしゅのお2人は「唎酒師の漫才師」ということですが。
にほんしゅ
にほんしゅ
北井:
そうですね。
エクストボーイ
普段はどんな活動しているんですか?
にほんしゅ
にほんしゅ
北井:
日本酒のイベントで漫才したり、司会したりしてます。
エクストボーイ
漫才も日本酒に関係するネタをやるんですか。
にほんしゅ
にほんしゅ
北井:そうです。
エクストボーイ
なるほど。ところで、お2人はコンビ組んでどれくらいなんですか?
にほんしゅ
にほんしゅ
あさやん:
えー2007年からなんで、
にほんしゅ
にほんしゅ
北井:
ちょうど丸11年たちましたね。僕はもともと違うコンビで漫才やったんですけど解散して。相方のあさやんはずっと1人でやってたんですけど。
ひょんなことがきっかけで「1回M-1グランプリの予選だけ出てみようか」ということで、ちょっとお試しで出てみたのが2007年ですね。
にほんしゅ
にほんしゅ
あさやん:
M-1グランプリ、 もろみワングランプリですね。
にほんしゅ
にほんしゅ
北井:
いやいや漫才ね。 もろみはお酒が発酵しているところね。
エクストボーイ
(さっそく漫才始めた…。)
M-1がきっかけってことですけど、なんで「にほんしゅ」ってコンビ名なんですカ?
にほんしゅ
にほんしゅ
あさやん:
験担ぎで「ん」と「し」が名前に入ってる人たちが売れるというのがあったんです。
にほんしゅ
にほんしゅ
北井:
ダウンタウンさんとか、とんねるずさん、ナインティナインさんとか、明石家さんまさんとかコンビ名に「ん」が入っていたり個人名に「し」が入っていたりってのが売れる芸人の法則としてあるんです。
それを験担ぎで入れてしまおうっていうところですね。
にほんしゅ
にほんしゅ
あさやん:
いろいろ案だしてたんですけど、ほんまに追い詰められて。居酒屋でコンビ名相談してたんですけど、行き詰まってしまったので「次に聞こえた言葉をコンビ名にしよう」って言ったら店員さんが「日本酒お願いしまーす」っていうのが聞こえて、あっじゃあ「にほんしゅ」にしようってことになりました。
エクストボーイ
なるほど。そこにミラクルがあったわけですね。
にほんしゅ
にほんしゅ
北井:
そうですね、21~22歳とかですから、ぜんぜん日本酒のことも知らなかったですし。
エクストボーイ
その当時は今やっているような日本酒関係の活動はイメージしていなかったんですカ?
にほんしゅ
にほんしゅ
北井:
ないですね。覚えやすいし、験も担げたのでいいかなと思って。
エクストボーイ
それが変化するきっかけってあったんですか?
にほんしゅ
にほんしゅ
あさやん:
2013年くらいですかね。
にほんしゅ
にほんしゅ
北井:
コンビ組んで5~6年くらいした時ですね。劇場で漫才やらせてもらえますし、ある程度自分たちに自信もあったんですけど、特に大阪で芸やしゃべることだけで生活していくっていうのはホントにハードルが高いというか、難しさを感じていたんです。

自分の好きなもんが武器になって、もっと出ていけるようなとことが増えたらいいなと思ってたんです。それでスポーツやテレビゲームも好きやけど、お酒一番好きやなと思って。

「そういえば僕ら名前、にほんしゅやな!」ってことに気付いたんです。でも日本酒のこと全然知らんなぁということで、好きやしちょっと勉強して資格とか取ってみて、何か起こっていけばいいなぁってくらいの軽い気持ちですね、最初は。
にほんしゅ
にほんしゅ
あさやん:
で、相方が大阪から夜行バス乗って東京行って。
僕ら2人今持ってる「唎酒師」の弟分の「日本酒ナビゲーター」って資格があるんですけど。
にほんしゅ
にほんしゅ
北井:
まぁ初心者向けのやつですね。それを僕1人で取りにいったんですよ。
にほんしゅ
にほんしゅ
あさやん:
4時間の講座を受けたらもらえる資格なので、4時間受けて。
一応その講師の方に挨拶しておこうと思ったらしく、「僕は大阪でにほんしゅっていうコンビで漫才やってるんです」って挨拶したんですね。相方が。

したらその講師の方が「にほんしゅ~?」ってビックリして。
「にほんしゅってコンビ名なのにどうして日本酒のこと知らないのっ!」ってめっちゃ怒られたらしくて。
にほんしゅ
にほんしゅ
北井:
4時間しっかり勉強したのに(笑)。
「知らんから勉強しにきたんですけど」
「そんな簡単につけるなっ!」みたいに怒られて。
にほんしゅ
にほんしゅ
あさやん:
「もし本当に日本酒のことを勉強する気持ちがあったら、一度うちの酒屋に修行しに来ない?」っていう風に言っていただいたらしく
にほんしゅ
にほんしゅ
北井:
その時の先生が町の酒屋さんの娘さんだったんですね。

その先生曰く、「日本酒が最近ブームになってきてイベントも多いからそれこそ漫才やるとか歌を歌うとかそういう人がもっと必要になると思うよ」っていうことを言っていただいて。

北井さん

にほんしゅ
にほんしゅ
あさやん:
ちょうどその頃にですね。吉本にはいろんな劇場あるんですけど若手の劇場でやらせてもらってたんです。

ある時ぼくたちNSC28期生よりも上の期ですね。28、27、26とか上の期は首切りというか、卒業しなさいと。その劇場にはもう出れません、という風に言われたんですよ。
エクストボーイ
おぉ、ピンチですね。
にほんしゅ
にほんしゅ
あさやん:
あっどうしよう、と。このまま大阪おってもなーみたいな。
にほんしゅ
にほんしゅ
北井:
その時周りでも辞めるなり続けるなり東京行ってみようとか、
そういう考える機会が明確にあったんですよ。

それが僕が「日本酒ナビゲーター」の講座を受けに行った1~2ヶ月後くらいで。タイミング的にも重なってたんですよね。
にほんしゅ
にほんしゅ
あさやん:
で、これはもう吉本やめて行こうっ!って。2014年の6月から2015年の1月までの期間、その酒屋さんで朝から晩まで働いてました。
エクストボーイ
そのコンビ名との縁に賭けてみよう、ト。
にほんしゅ
にほんしゅ
北井:
そう。でやるなら中途半端にやったり、あとは1人で「〇〇芸人」みたいな言い方が世の中に浸透してると思うんですけど。僕らも「日本酒芸人」っていう言い方もやろうと思えばできると思うんです。けどそれだとつまらない、というか。それが市民権を得ている時点でちょっと遅いなと思ってたんです。

やるなら突き抜けないと意味が無いと思っていたので相方にも一緒に来てもらっておんなじ修行をして、普通の人に負けないような勉強をしようと思ってやりましたね。
にほんしゅ
にほんしゅ
あさやん:
僕に関しては興味はそんなになかったんです。
酒飲むん好きやけど、勉強とか嫌いやし。
にほんしゅ
にほんしゅ
北井:
そうですねぇ、勉強は苦しんでましたね。
にほんしゅ
にほんしゅ
あさやん:
苦手も苦手やし、唎酒師なんて資格も全く興味がない感じやったんですね。でも酒屋で毎日お酒に触れるわけですね。そうすると愛着湧いてくるんですよ。

徐々に徐々に名前も覚えていって、友達がどんどん増えていく感覚ですね。そんな中で僕も北井に負けたくないなって思って、「僕も一緒に取るわ」って一緒に唎酒師をとった感じですね。
エクストボーイ
なるほど。では改めて今の活動について教えてください。
にほんしゅ
にほんしゅ
北井:
今は漫才とイベントとかの司会ですね。あとはそれこそ僕が1番最初に受けた「日本酒ナビゲーター」の講座の講師をやらせてもらってます。

そこでお酒の話とか各地回った色んな経験を話して、最後にお酒の漫才聞いてもらって締め、みたいな講座をやってますね。僕ら初心者の方に伝えるってことが頑張りたいことなので。
にほんしゅ
にほんしゅ
あさやん:
より分かりやすくっていうの心がけてますね。
にほんしゅ
にほんしゅ
北井:
好きでお酒飲んでるわけですけど、お酒のことをしゃべるとか漫才にするってことでやらしてもらってるのは本当に大きいですよね。
にほんしゅ
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あさやん:
いろんな方が担ぎ上げてくれるというか「若者よ神輿に乗れ!」みたいな感じ。「俺たちがよいしょよいしょやったるから!」みたいな感じで日本酒業界の人達に助けてもらってるなーって感じますね。
にほんしゅ
にほんしゅ
北井:
そうですね。こういった活動が日本酒業界にもプラスになって返ってくるんだってことで、色んな方に応援してもらってますね。
エクストボーイ
魅力を伝える時の難しさってありますか?
にほんしゅ
にほんしゅ
あさやん:
昨日兵庫県の酒蔵さんに見学行ったときに、まさにそういう話になったんですけど。

造り手もお酒の説明をするときにスペックから話しがちというか。酒造用語から入っていくんですよね。
にほんしゅ
にほんしゅ
北井:
ハードル高いですよねとても。
にほんしゅ
にほんしゅ
あさやん:
知らない単語がどんどん出てくるわけですから。
にほんしゅ
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北井:
よっぽど興味があって「知りたい!」って人ならいいですけどね。それは僕らじゃなくてもいいんです。
にほんしゅ
にほんしゅ
あさやん:
そうじゃなくて、例えばその方の蔵は山田錦ってお米で初めて大吟醸を生で出荷したっていう蔵なんですね。それで第一号になりたい、山田錦っていうお米をもっと広めたいっていう思いから行動に移しはったんです。

そういう風な感じで、「自分の蔵はこういう蔵なんです」っていう説明をしてから「じゃあ飲んでください」っていう飲ませ方をすると変わってくる。

まずは自分がどういう想いで作ってそれを皆さんに届けたいのか、ちゃんと蔵の方がそれぞれ話せるようにならないとってことを言ってましたね。
エクストボーイ
スペックではなくストーリーで語る、と。
にほんしゅ
にほんしゅ
北井:
それもそうですし、両面ないとダメですよね。スペックを知りたくて来ている中級者の方向けの説明もいいと思うんですけど、その手前にいる人に「日本酒飲んでみたいな」って思わせる入り口として、魅力的なストーリーのほうを伝えていくのは僕らの漫才だと思ってますね。
にほんしゅ
にほんしゅ
あさやん:
それをどんどん伝えていくネタを作っていきますね。
にほんしゅ
にほんしゅ
北井:
飲みたくなる漫才ですね。
エクストボーイ
飲みたくなる漫才いいですネ。
にほんしゅ
にほんしゅ
あさやん:
飲みたくなる漫才、酒漫才ですね。
にほんしゅ
にほんしゅ
北井:
「なんか飲みたい!」みたいな。日本酒の漫画何個か名作ありますけど、あれと同じ役目ですよね。「あっこれ、日本酒にハマっちゃいそう!」「飲んでみたいわっ!」みたいな漫才です。

あさやんさん

エクストボーイ
飲みたくなる漫才の真髄はどこにあるんですか?
にほんしゅ
にほんしゅ
北井:
究極いくとねもう「ボケない」になるんですよ(笑)。
にほんしゅ
にほんしゅ
あさやん:
そうなんですよ(笑)。これがいま僕たち1番面白い!。
にほんしゅ
にほんしゅ
北井:
本当に1回もボケないまま5分くらいしゃべるんですよ(笑)。

普通のお笑いの大会とかだと持ち時間2分とか3分とかで予選100組の中で目立ってみたいな感じですけど、僕ら2分とかだったら自己紹介だけで終わりますから。15分くらいやってますからね。

「こういう話をするのはこの人達しかいない」っていう存在というかですね。面白いっていうのもファニーじゃなくてインタレスティングのほう。「興味深い」「趣深い」みたいな。

そういうところで1つのお酒にまつわる造り手さんのエピソードをニコニコ「おもろい話があんねん」ってみんなに日本酒に興味もってもらいたいから話すんですけど。 ホンマに話し始めてからファニーは1個もなくて、拍手が起こるようなインタレスティング・感動物語をやって、

「な?おもろいやろ?」

「いやおもろいけど意味が違うわっ!」

みたいな感じでやってますね。1つも無理やりボケることもなくやらしてもらってます。
エクストボーイ
そのエピソードを語るにはたくさん準備が必要ですよね?
にほんしゅ
にほんしゅ
あさやん:
そうですね。蔵見学とか行かせてもらって、それを録音して間違いがないようにはしてます。
エクストボーイ
いけるならもっとたくさん蔵を回りたいですか?
にほんしゅ
にほんしゅ
北井:
しぼっていかなきゃいけないなーと思ってます。例えばそのエリアで30分おきくらいに酒蔵さんがいくつかあったとしても、自分たちが本当に行きたいところを自分たちでお願いしてアポとって行くようにしています。

1日で3つ回るとかも可能っちゃ可能なんです。で正直、最初の方はそれやってたんですね。
2~3蔵さんアポとって回ってたんですけど、あんまりそれも意味ないなというか。
にほんしゅ
にほんしゅ
あさやん:
数行けばええっちゅうもんでもないということですね。
にほんしゅ
にほんしゅ
北井:
1個をしっかり見る。1~2時間くらいだと、やっぱり一般のお客さんと同じくらいのお話のボリュームしかないので。
にほんしゅ
にほんしゅ
あさやん:
あとはある程度関係性を作ってから行くと聞けるお話もありますから。
エクストボーイ
お2人が考える日本酒の魅力ってなんだと思いますか?
にほんしゅ
にほんしゅ
北井:
個人的な楽しみとしては、知れば知れるほどボトルを見ると人の顔が浮かぶわけですよ。「あの人と食べたお昼ご飯美味しかったな。」とかボトルを見るだけで色んなことが思い浮かぶわけ。それは個人的には無限に面白くなっていきますよね。

「あそこの社長の息子さんが今度農大卒業して帰ってきたらしいぞ」とか、勝手にストーリーが分厚く濃厚になっていくというか。あとは「あそこの息子さんは今度帰ってきたけど、元は姫路のあそこの蔵で修行してたから、こういうところ大事にしてるんだ」みたいな、色々あるんですよ。
エクストボーイ
ドラマですね。
にほんしゅ
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北井:
そうですね。日本酒が並んでる冷蔵庫をみると勝手にドラマが始まるわけですよ。あの酒とあの酒は師弟関係だなとか、ボトルを見ていると立体的になっていくんですよね。アニメとかドラマを見ているような感じです。
エクストボーイ
じゃあ一方で日本酒一般の魅力ってなんですかね?
にほんしゅ
にほんしゅ
北井:
どう飲んでも美味しいというか、楽しみ方の幅が広いんですよね。ちょっと教える人がいないとダメなんですけど。あとは飲み方の広さですね。例えば温度、キンキンに冷やした状態から60度くらいの燗酒まで1本でいけるお酒っていうのはあんまりないですからね。

懐の深さが、出汁文化の日本とは合う気がします。料理に合わせるときの日本酒の「良いキャッチャー」感というか。やっぱビールと刺身って俺らのなかではダメになったもんね。合わないわけではないですけれど、最初の乾杯くらいで。
にほんしゅ
にほんしゅ
あさやん:
よくお酒を飲むことでストレス発散するってあるじゃないですか。それでビールはサンドバッグを殴るようなストレス解消方法。で日本酒は温泉に入るようなストレス解消方法。
にほんしゅ
にほんしゅ
北井:
僕らも30過ぎてきたのでやっぱり温泉のほうがいいんですよね。サンドバッグ殴るのちょっとしんどいので(笑)
エクストボーイ
今のご活動はお2人の中でどういう思いでやってますか?
にほんしゅ
にほんしゅ
北井:
YouTuberのCMで「好きなことで生きていく」ってのあるじゃないですか。ホントにあれに尽きると思うんですよね、これからの時代。芸人って大会で優勝するとかテレビにでるとか、いろいろありますけど。

そうやって勝ち残っていくんじゃなくて、自分たちで作っていくような活動の仕方がこれからは主流になるんじゃないかと思っていて。自分の好きを追求することで、仕事としても成立するような活動の仕方を示せていけたらいいなと思います。
エクストボーイ
「日本酒」ってどんな存在ですか?
にほんしゅ
にほんしゅ
あさやん:
僕は「明日のために飲むお酒」だと思いますね。
にほんしゅ
にほんしゅ
北井:
この間、大阪のおっちゃんが言っとったやつね、乾杯の挨拶で(笑)
エクストボーイ
「明日のために飲むお酒」ってどういう意味ですか…?
にほんしゅ
にほんしゅ
あさやん:
つまり、前向きなお酒なんですね。「次の日に残るお酒」ではなくて、明日も元気にお仕事をするためのお酒だと思うので。

その大阪のおっちゃんが単純に好きになったので、そのお言葉を受け継いでいこうと思ってます(笑)。
ロケ地協力:日本酒けんちゃん
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にほんしゅ
唎酒師の漫才師
関西出身の北井・あさやんの漫才コンビ。世界で唯一のコンビ2人ともが日本酒の唎酒師資格を持つ漫才師。日本酒ナビゲーター資格の講師や全国での日本酒イベントで漫才の披露・司会などを中心に人々に日本酒の魅力を伝える活動を行っている。