かばんばか川本ゆうや

「かばん屋をアップデートせよ」元サラリーマンがインドで悟った”かばんばか”への道

「かばんばか」というキャッチーな名前で、Twitterなどで発信を続ける川本さん。

もともとはかばんとは関係のない一般企業に勤めていたそう。

迷える青年あるある(?)のインド旅で自分のやりたかったことに気づき、アッサリと退職。そのまま超老舗のかばん工房に飛び込んで弟子入りし、どこにもないかばんを作り続ける「かばんばか」となった川本ゆうやさんに話を聞いてきました。

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イチノミヤ
イチノミヤ
川本さんは「かばんばか」のブランド名でかばんを作られていますが、変わった形のかばんがたくさんありますね!
川本さん
川本さん
そうですね(笑)。

僕は、世の中にないかばんを作り続けて、かばんの博物館を作りたいと思ってるんですよ。
イチノミヤ
イチノミヤ
いきなり壮大な話ですね。

川本さんの工房にお邪魔しました。

京都市北区西賀茂水垣町43

川本さん
川本さん
かばんの博物館って、今のところ国内に1箇所しかないんですよ。
イチノミヤ
イチノミヤ
あるにはあるんですね。
川本さん
川本さん
東京にあるんです。かばん好きの人とか、かばん作る人は、みんなそこに行くんですよ。
イチノミヤ
イチノミヤ
なるほど。
川本さん
川本さん
つまり、いちいち東京に行かなきゃいけない。しかも博物館って1回見たらもう1度見に行きたいってあんまりならないんですよね。

例えば、美術館は展示物がテーマによって変わるじゃないですか。それと同じように、館内のかばんがどんどんアップデートしていったら面白いんじゃないかって。
イチノミヤ
イチノミヤ
それなら何度行っても新鮮ですね。
川本さん
川本さん
それで、売れなくても良いんで、世の中にないかばんを作りたいなと思って。今もそればっかり作ってるんですよ。

これ、「かばっく」っていうんですけど、ここが耳ここが目、鼻でカバみたいに口が開くっていう(笑)。

まさにカバ

イチノミヤ
イチノミヤ
たしかに見たことない。
川本さん
川本さん
師匠にはめちゃめちゃ反対されましたけど(笑)。
イチノミヤ
イチノミヤ
もうアイデアから自分で考えて作ってるんですか?
川本さん
川本さん
アイデアも設計も全部自分でやってますね。

でも実用性も無視したくなくて。このかばっくも使いやすいんですよ!収納は意外と多いし、背負ったまま物が取り出せるように作ってあります。
イチノミヤ
イチノミヤ
おぉ〜
川本さん
川本さん
他にはこれ、「スーパーバッグ」っていうんですけど。S字にファスナーが付いてて、バナナが入るんです。
イチノミヤ
イチノミヤ
バナナ…?

バナナが入ります。

川本さん
川本さん
皮素材ってどうしても色移りがしやすいので、内側にはナイロンを貼っていたりします。あとは、底には底鋲を打ってあるのでちゃんと自立します。それで芯材も入ってるので型崩れもしにくいんです。
イチノミヤ
イチノミヤ
つかぬ事を伺いますが、売れてるんですか…?
川本さん
川本さん
かばっくは結構売れてるんですよ!

他は全然売れなくて、もう開き直りましたけど(笑)。
イチノミヤ
イチノミヤ
そういえば、そのTシャツも気になっていたのですが。
川本さん
川本さん
そうなんですよ、これ「ティーバック」っていうんですけど。
イチノミヤ
イチノミヤ
ティーバック。いやでも、これ意外と便利かもしれませんね。
川本さん
川本さん
Tシャツって上着と違って収納がないですからね。

夏場でも使えると思います。あとこれ、洗えるかばんですから。
イチノミヤ
イチノミヤ
かばんなんですね(笑)。
川本さん
川本さん
かばんです。洗えるかばんで、着れるかばん。

そう言い張ってます(笑)。大体相手の方が諦めます。

この後、ティーバックから飴が出てきます。(いただきました)

川本さん
川本さん
こうやって全く見たことないかばんを作り続けたいんです。で、博物館をアップデートしていくっていう。

次来た時には全く違うラインナップの博物館が出来上がっている、博物館が進化し続けるかばん屋さんを作りたいと思ってるんです。
イチノミヤ
イチノミヤ
たしかに普通のかばん屋さんではないですね、面白そう。
川本さん
川本さん
今もう60個くらい作りたいかばんのアイデアができてて、作ってる間にも閃いちゃうんですけど。

1年くらいオーダーお待ちいただいている状況で、なかなか新しいかばんも作れないので、最近はあんまり考えないようにしてます(笑)。
イチノミヤ
イチノミヤ
1年もオーダー待ち。
川本さん
川本さん
あと博物館とは別で、フルオーダーのかばん屋さんを作りたいんですけど、現状って、型、皮、色から選ぶっていう、セミオーダーの形はあってもフルオーダーって実はあんまりないんですよ。
イチノミヤ
イチノミヤ
そうなんですね。
川本さん
川本さん
既存のパターンから選ぶのではなくて、型も何もない、まっさらなところから思いついたものを作るっていうことをやっていければなと思って。

資本力で大量生産っていう方向よりも、その人に合ったものが欲しいとか、世界にひとつしかない自分だけのものが欲しいっていうニーズに答えていきたいんです。
イチノミヤ
イチノミヤ
なるほど。
川本さん
川本さん
そのニーズがあるなら、僕のやりたいことともマッチするんじゃないかと。

そしたら僕は好きなものを作り続けられるし(笑)。
イチノミヤ
イチノミヤ
他にも今後やりたいこと、あるんでしょうか。
川本さん
川本さん
あとは、障がい者の方に向けたかばんをつくりたいんですよ。
ファッションブランドもいろんなのがありますけど、障がい者向けのブランドって見かけないんですよね。

かばんでも、握力が弱い方は市販のかばんだとどうしても使いづらい。障がい者の方にも使いやすくておしゃれなかばんってあんまりないなと思っていて、そのブランドを立ち上げたいなとも考えてるんです。
イチノミヤ
イチノミヤ
ところで、そもそもかばんづくりをするようになったきっかけってなんだったんでしょうか?
川本さん
川本さん
あんまり参考にならないかもしれないですけど…(笑)。

20歳過ぎくらいのときにインドを旅していた時があって。そこで、ふと、かばん作りたいなと思ったんですよ。
イチノミヤ
イチノミヤ
出ました、インド。
川本さん
川本さん
あ〜かばん作りたかったんや自分〜。って気づいて。当時はかばんとは関係のない業界で会社員として働いていたんですけど、今のまま独学で作り続けてもクオリティも低いしラチがあかんなと。

それで弟子入りを決意して転がり込んだのが今のアトリエなんです。
イチノミヤ
イチノミヤ
しかし、インドでかばん作りに行き着きますかね… 露店でかばん職人に出会ったとか?
川本さん
川本さん
「旅」のイメージが、ドラクエみたいにローブを羽織って荒野を歩くみたいなのを想像してたんですよ。いざ現地行ったら誰もローブ着てないんです。どこに売ってんねんと思って。

当時、世界一周してる友達がいたので、その話したら「いや、みんなTシャツやで…。」って(笑)。
結構衝撃受けて。そこで、ないなら自分で作ってみようって最初に思った瞬間でしたね。
イチノミヤ
イチノミヤ
僕もインド行ったことありますけど、そりゃTシャツを着てますよね。
川本さん
川本さん
ただ、実際作るかっていうと、僕は服にはさほど興味がなくて。ふと、自分かばん好きやなって思いついて、かばん作りに行き着いた感じですね。
イチノミヤ
イチノミヤ
もともとかばんは好きだったんですか?
川本さん
川本さん
好きでしたよ!でも別に皮ではなくてナイロンの、フツーのかばんが好きでした。

ただ、かばん好きの人ならわかるかもしれないですけど、自分が「欲しい!」って思うかばんって滅多に見つからないんですよ。どこかしら微妙なポイントに満足しきれないことがよくあって。それなら自分で作ってみようと。
イチノミヤ
イチノミヤ
弟子入りして、いつ頃から自分の作品を作り始めたんですか?
やっぱり最初は修行の日々だったりするんでしょうか。
川本さん
川本さん
弟子入りして、最初ミシンを踏むところから始まるんですけど、その踏み加減というか、コントロールできるようになるのに1ヶ月かかって。

まずそれができないと、うまく皮を縫えないんですよね。ただこれが結構使い方ややこしくて!
川本さん
川本さん
勢い付いて行き過ぎちゃうと、針穴付いちゃって使い物にならなくなっちゃったりして。

最初のかばん完成させるのに3、4ヶ月くらいかかった気がしますね。それだけに、できたときは感動しましたけどね。
イチノミヤ
イチノミヤ
かばんを作る工程ってめちゃめちゃ複雑なんですね。
川本さん
川本さん
工数めちゃめちゃかかってますね。僕が作るかばんって立体的なものが多くて、平面なものを作るよりも難易度が跳ね上がってるんですよ。

で、全く売れへんっていう(笑)。

かばっくもスーパーバッグも作るのは結構大変。

イチノミヤ
イチノミヤ
そういえば、ホームレス小谷さんにかばんをプレゼントされてましたね?
川本さん
川本さん
しましたね(笑)。ある時、Facebookライブで小谷さんが「神社になりたい」って言ってたんですよ。神社なら「鳥居バッグ」かなと思って早速作って。

もともと僕が参加する予定だったあるイベントがあって、そこに小谷さんも来られるということで、そこに勝手に持って行ったんです。

※ホームレス小谷…ホームレス芸人。何でも屋として自分の1日を50円で売り、人との縁や恩に助けられながら新時代を生き抜く男。ホームレスになって以降、体重が増加したり、人生の伴侶と巡り会うなど、世間の予想をいい意味で裏切り続けている。

イチノミヤ
イチノミヤ
勝手に。
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【ホームレス小谷さん】に新作【鳥居バッグ】を渡してきました! ホームレス小谷さん「神社になりたい」 とおっしゃっていたので勝手に鳥居バッグを作って持って行きました!笑笑 小谷さんは日給50円で生活されている日本一有名なホームレスの方です。笑 1日50円で宣伝もしてくれるそうなので「36500円の鳥居バッグを2年間背負ってかばんばかを宣伝していただけませんか」と聞くと「いいよー!」と快諾していただきました。笑 優しさもさることながら一年半前のTOLANDで行われた西野さんの講演会でお会いしたことも覚えててくれました!嬉しい!!! 計算すると日給50円×365日×2年=36500円という感じです。 僕はお金がないので鞄を、ホームレス小谷さんもお金がないので宣伝をという鞄と宣伝の物々交換です。 素材は牛革です。補強も入れて丈夫に仕上げました。 前にある黒い6つの穴があると思うのですがそこに賽銭を入れることができます。 小谷神社はご利益があると思うのでぜひ入れて見てくださいー!笑笑 #ホームレス小谷 さん #グレフェス #TOLAND #GLF #かばんばか #鳥居バッグ

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川本さん
川本さん
そしたら、めっちゃ気に入ってくださって。

小谷さん、自分を1日50円で売ってるじゃないですか。だから2年間を、36,500円買うので、背負って宣伝してくださいって言ったら「いいよ〜」って(笑)。
イチノミヤ
イチノミヤ
アッサリだ。
川本さん
川本さん
でも、お金でどうこうではなくて、僕ならかばんをつくること、小谷さんは背負って宣伝することっていう、お互いができることを物々交換できた感覚があって。

この体験って、この時代ではあんまりできることではないなと思って、新鮮な感覚がありましたね。
イチノミヤ
イチノミヤ
小谷さんも結果、世界に一つのかばんを手にしていますしね。
川本さん
川本さん
小谷さんの宣伝効果ってすごいので、早速ダルマとかゴキブリとかのバッグ作って欲しいっていう依頼をいただきましたし(笑)。

こんな感じでふざけてるんで全然売れないんですけど、今はそれでいいと思ってるんです。経験とか、自分の引き出しを広げていきたいというところがあるんで。
イチノミヤ
イチノミヤ
自分の引き出しを広げる。
川本さん
川本さん
伝統工芸とか、技術系の人たちって、みんな技術のすごさを取り上げがちな気がするんですけど、必ずしもそこがポイントではないと思ってて。

結局、お客さんが喜んでくれるかくれへんかっていうところが重要になってくると思うんです。

だんだんと真剣モードに

イチノミヤ
イチノミヤ
なんだかわかる気がします。
川本さん
川本さん
自分のアートを追求するのか、それともお客さんのことを考えて、機能性を考えたデザインを追求するのか、そこで僕はめちゃめちゃ揺れてますね。本音はどっちもやりたいんです。
イチノミヤ
イチノミヤ
アートとデザインの違い、ってやつですね。
川本さん
川本さん
全然違うじゃないですか。アートは自分の立場で、デザインは相手の立場で。

ただ、昔は、自分のために追い求めるのがアートだったと思うんですけど、今の時代って、アートでも人のためになり得ると思うんです。アートを通じて人が繋がれるじゃないですか。だから、アートとデザインの境目ってどんどん曖昧になってきてるなと。

余計にどっちもやりたいなと思ってしまいますね。

取材:イチノミヤ(@nomiyaDX)/ 文:のみちたつお(@_nomichi_

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川本ゆうや
かばんばか
1991年生まれ。大学卒業後、一般企業を経験。インド旅の道中で、自分のやりたいことは「かばんを作ること」だと気づき、かばん職人のもとへ弟子入り。以降、「好きな人は好きなかばん」をテーマに、自身のアイデアやお客さんの要望から、どこにもないカバンを作り続けている。